映画「ソナチネ」(1984) カナダ映画 監督:ミシュリーヌ・ランクト
オリジナルタイトル:Sonatine
監督・脚本:ミシュリーヌ・ランクト|カナダ|1984年|91分|
撮影:ギイ・デュフォー|
出演:シャンタル(パスカル・ブスィエール)|ルイゼット(マルシア・ピロト)|バス運転手(ピエール・フォトー)|船員(クリメント・デンチェヴ)|バス運転手の妻(ポウリーヌ・ラポワント)|ルイゼットの両親(ピエール・ジャール、テレーズ・モランジュ)|ほか
地下鉄の座席に座るルイゼットとシャンタル。
2人の後ろに見える手作りボードには、「誰かが止めない限り、私達は死にます」と書いてある。
<カナダ、モントリオールの地下鉄車内にて>
高校生の女の子ふたりの心情を、詩情あふれる映像に乗せて描く映画です。
そのふたりとは、シャンタルとルイゼット。
映画は、まず、シャンタルのことから語り始めます。
雨上がりの夜、赤いテールライトを、濡れた道路に映して走る路線バス。
わずかな乗客、ガランとした車内にシャンタルがヘッドホーンで音楽を聴きながら座っている。
そのバスは、いつもの時刻の通い慣れたバスだから、シャンタルは馴染みになった運転手の男と会話を少し。
それは、ほんのわずかなことだが、思いのほか、孤独なシャンタルの心を慰めた。
男は穏やかそうな中年の運転手だが、運転中に時々、ポケット瓶のウィスキーを飲む、いささかヤンチャな男。
ルイゼットは、夜の港に停泊中の外国航路の船に忍び込んだ。密航しようとしている。
だが、ひとりの船員に見つかってしまう。
外国人の彼は、だんまりのルイゼットに何やら話すが話が通じない。(ちなみに本作はカナダの仏語圏の映画)
しかし、互いにたどたどしい会話が進む中で、ルイゼットはこの中年の船員の、何とも言えぬ優しい包容力に触れる。
結局、彼に促されルイゼットは下船。港には、潮風と夜のしじまを突いて、どこかの船の汽笛が響き渡っていた。
シャンル、ルイゼットは共に、ヘッドホーンを欠かさない女の子。
それは、音楽好きというよりも、自身のまわりの現実を遮断するかのよう。
その一方で、「自身のまわりの現実」以外(つまりアウトサイダー)から差し伸べられる、いわば救いの手を、彼女たちは待ち望んでいる。そして「ここではない何処かへ」を望むかのよう。映画はそう語る。
さて、映画はここにエピソードとして、モントリオールのバス地下鉄乗務員のストライキを盛り込んでくる。
そのことによる影響のひとつ。
シャンタルと馴染みの運転手はストライキに加わらず、結果、シャンタルの前から姿を消した。シャンタルの、なんとか保っていた心の安定が崩れ始める。
ストライキによる影響のもうひとつ。
地下鉄ストライキの突入は、映画ラストで、シャンタルとルイゼットの運命に斧を振り下ろすことになるのでした。
繊細な映画なので、取扱注意です。
> 我来回应