ヒトリシズカ

あの子の声を聞いたから、もう安心であの世に行く。 澪は腹違いの妹、あの子のことを見ると、自分のことを思い出す。ヤクザの父親と軟弱な母親の狭間に生きてきた無力な自分を。 もし、あの頃の私にあんなことされなかったら...もし、あの時、母さんはもっと強くなったら...もし、母さんの子どもじゃないなら...といつも考えてた。母さんは優しいけど、軟弱で、男に頼らないと生活できないんだ。常に強い男にはめてる。私、そういうの嫌い、けど、母親だから、やっぱりいい男と一緒に住むのを望んでた。警察の伊藤さんの体に寄って泣いてる母さんの姿を見て、すぐわかったんだ。母さんは伊藤さんのことが必要なんだ、そして伊藤さんは頼れる男だってこと。 私、家出したんだ。15歳の頃。あの日、松井が死んだ、もうこれ以上隠す必要ないと思って、7年前に松井が唐澤を殺した凶器を捨てて、それが母さんと義理の父親の伊藤さんにバレた。思いきり家出した。 身分を隠すために何回も名前を変えて、バレないように人を利用して、殺人までした。自分の人生は最初から狂ってる、実の父の南原義男を殺してから自殺するつもりだけど、澪に会った。あの子は私と同じ目をしてる。もし、あの時、子どものポルノビデオに撮影されなかったら、私も澪のように無邪気になるかな。けど、全部壊された。 私はこれから澪のことを守ると決意した。私の分まで幸せに生きようと望んでた。南原澪という身分を隠して普通に幸せして、家族ができて、並の生活ができるようにずっと見守りたいんだ。残念ながら、今、こういう身なので、これから一緒に生きることはできなくなった。でも、心配なく、あの世に行っても澪と澪の家族を私が見守ってあげる。