俺たちは最短距離で行くから、気をつけろ!
「あの夕方、実はすげぇよかったよな!」(ヒサシの科白より)
延々と続く国道の有り触れた光景が、その周辺に生きているチンピラたちにとっては、どうでもいいとしか思えない。だって清濁を問わず目の前の全てを受け取るしかない、と彼らはずばり言うだろう。そこには、物事のあり方をますます複雑に考え、迂遠な方法で世界を理解しようとする我々凡人との決定的な違いが在る。つまり彼らこそ、いささかの躊躇もせず、事物間のありとあらゆる最短距離において身を置くのだ。
『国道20号線』では、国道が踏破すべき長い道のりとして描かれていないのは当然である。だってひとつの切断面だけでも十分だから。不要不急な形而上学も、当然ながら持ち込み禁止。その代わりに、消費者金融とパチコン屋の間(借金)、ゴルフクラブセットと潜在顧客の間(マルチ商法)、あっちの世界とこっちの世界の間(脱法ドラッグへの依存)に既に用意されている様々な「最短距離」を測り直すことは今すぐ、大至急かのようだ。
もう一度言う。国道なんて彼らは平気で横切る。その平気ぶりは、今度、空族による厳格なワンシーン・ワンショットの演出法のもとに躍然と立ち上がる。さて、どうだろう。チンピラたちの振る舞いからあなたご自身の痛みを感じ取っているのだろうか。まぁ、致し方ない。ショットごとに辿っていけばいくほど、しんどくなる。しかし、そうしなければ、同情も慈悲心も、余計なものをフレームに入れる気などさらさらない空族作品の真価を見極める方法は他にあるのだろうか。
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这篇影评有剧透